会話上手になるには、場数を踏んで、いかに、いろいろな人と接する機会を設けるかが大切ではあります。
どれだけ経験するかということなんですけど。
何でもそうですけど、習得するためには、繰り返すことって必要になります。
一度や二度、挑戦して上手くいかないことも多いものですけど、それでも諦めないことが大切なんですよね。
ただ、場合によっては大失敗することもあり得ます。
川上くんは、幼い頃から引っ込み思案で、とても大人しい子供でした。
人見知りもするし、人前に出ることを、極端に嫌がるほどだったんです。
思春期になると、女子と喋ることも、全くと言っていいほど、無理なことでした。
相手から話し掛けてくれても、うん、そうなんだくらいの返事をするので、精一杯でした。
川上くんも、男ですから、好きな女子もいたんです。
このままだとダメだ
と思ったんですね。
もっと、話せるようにならないと
彼女だって欲しいし
みんなと、いろいろ楽しみたいし
と思ったんです。
それからは、自分からも話し掛けるようにしたんです。
好きな人にだけでなく、他の女子にも。
でも、全然上手くいきません。
少しでも、会話が続くなら良かったんですけど、全くです。
上手く話をしないといけない
と考えてしまって、余計に話せなくなっていたんです。
でも、もっと経験を積んでいけば、慣れてくるはずだ
と、さらに頑張ったんです。
それでもダメでした。
失敗してしまうことで・・・
ある日、その好きな女子に、いつも話し掛けていることから、クラスの人に、川上って〇〇のこと好きなんだろう、とからかわれてしまったんです。
その時、あまりにも恥ずかしくなって、顔だけでなく耳まで真っ赤になているのが自分でも分かるほどで。
しかも、その日の音楽授業の中で、一人ひとり前に出て、先生のピアノの伴奏に合わせて、歌を歌うというようなことがあったんです。
川上くんの番になった時に
〇〇のために歌うのか?
〇〇が見ているぞ!!
なんてことを、同級生に言われてしまいました。
ただでさえ、人前というのが苦手で緊張しているのに、好きな子のことで、からかわれてしまったことで、もう頭が真っ白になりました。
なんとか、ピアノに合わせて歌いましたけど、声が裏返ってしまったりして、全く上手く歌えなかったようです。
そんな姿を見て、クスクス笑っている人もいて、その中で好きな女子も笑っていたんですね。
それを見て、当然なことですけど、すごくショックだったんです。
好きな人と、話をすることもできなくて・・・
人前だと緊張して、何もできにない・・・
しかも、みんなに笑われて・・・
好きな女子にさえ、バカにされてしまう・・・
こんなことを考えてしまって
僕は、人前が苦手、人との会話も苦手、人付き合いも苦手・・・それが男でも女でも、上手くいかない
と自分の考えが出来上がってしまったんです。
完全に苦手意識が形成されてしまって、その後は以前にも増して、大人しい性格になってしまったんです。
自分から、無理して話し掛けることなんて、しなくなってしまったんですね。
それからは、今まで通りに大人しい川上くんに戻ってしまって、卒業してから同窓会があっても、出席することもありませんでした。
数年ぶりに会ったことがありましたけど、大人しいままでしたね。
川上くんの場合は、周りの人間関係に恵まれていなかったということもありますけど、無理して頑張り過ぎたことも良くなかったのかもしれませんね。
経験をすることは、とても大切なことではありますけど、あまり気を張り過ぎないようにした方が良い時もありますよ。